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新しい時代のマネジャー像(2)調整能力
職場のメンバーの多様性と出入りの多さは、以前に書いた。職場メンバーの安定感は欠くが、この状況はこれから常態になる。
従って、マネジャーには調整能力が求められる。業務を担当者に割り当てても、様々な事情で職場を離れる。その時、業務を「誰に担当させるか」という課題が残る。
これまでのマネジャーは、業務担当者として評価された者がマネジャーに登用されてきた。しかし、業務担当者とマネジャーの能力要件は明らかに違う。実務能力とマネジメント能力は全く別物だ。
実務経験豊富なマネジャーの強みは、実務指導ができる点であるが、これから実務は大きく変わっていく。マネジャーの経験は、“時代遅れ”になっていく。マネジャーが経験のない業務をメンバーが担当している場合もある。
業務は、ますます専門性が求められる。マネジャーがあらゆる業務の専門性をもつことは不可能だ。
結局、どうすればよいかと言うと「複線型人事制度」の導入だ。マネジャーを目指す者、スペシャリストを目指す者の両者に活躍の場を与える仕組みだ。
どちらのキャリアも経験を積んで成熟していくので、早くから自分のキャリアを決めて、目標をもって日々、研鑽を積むことが重要だ。キャリアの早期選択はリスクがあるという考え方もあるが、中途半端なキャリアを長年積む方が、よっぽど将来リスクがある。
≪続く≫
評価は、人をやる気にさせるのか?
先日は、人事制度をテーマに研修を行った。被評価者が人事制度を理解し、セルフマネジメントを学ぶ研修だ。
若干説明する。人事制度とは、目標管理制度と人事評価制度のことだ。セルフマネジメントとは、自己管理のことで部下が主体的に目標を達成する活動だ。
ポイントは、研修対象者が被評価者であること。これまで人事制度は評価者を対象に研修してきた。今は、被評価者も研修する。人事制度の目的を達成するためだ。
評価する側もされる側も人事制度を理解して、組織として制度の目的を達成する。
人事評価の重要な目的は、処遇の決定ではなく人材育成とモチベーションの向上にある。
そう言って、受講生は理解できるだろうか。評価は管理者が決めるもの。部下は、評価を受け入れるしかない。そんな時代が長く続いている。これで、なぜ部下が育つのか、やる気が高まるのか。少なくとも被評価者にはわからない。
等級別に評価基準を設定している。受講生の等級の前後で“基準の違い”をグループでホワイトボードに書き出す。(3等級なら2等級か4等級の違い。)
自等級の評価基準を理解するためだ。そして、クラスの一人に発表してもらう。(評価項目と着眼点は多岐にわたり、発表は大変だ。誰も発表したがらない。)
沈黙の末、誰かが発表してくれる。そして、その言動を評価基準に照らして受講生に評価させる。沈黙の中で意を決して率先して発表する発表者の意識と能力をどのように評価すべきか。
受講生が、評価基準に照らし合わせ、その意識と能力を評価し発表する。「規律性」「積極性」「責任性」「協調性」「知識」「判断力」「実行力」など発表業務には評価される多くの能力、意識の要素が含まれる。
多くの人に、具体的な言動を評価される。そこで発表者に「今の気持ちは?」と聞いた。発表者は笑顔で「うれしいです」と言った。そこで私は、「これが評価の目的です。」と言った。
やるべきことをやり、きちんと評価されれば人はやる気を高めるのだ。(これは、体験学習型研修の一コマだ。)
新しい時代のマネジャー像(1)業務設計能力
時代は、大きく変わっている。環境の変化に対応できるモノだけが生き残る。生物も企業も同じだ。そして企業の要はマネジャーだ。変化と安定のバランスを取りながら、メンバーをリードして目標達成を目指す。
これからのマネジャーに必要な能力は、業務設計能力だ。職場の業務、優先順位、手順・手続き、標準時間、能力要件などの業務設計能力が求められる。
業務設計の次が、業務管理だ。今のマネジャーは、職場の業務をどれだけ把握しているのか。管理者研修を続けてきて感じることだ。
業務設計能力が必要な理由は、メンバーが多様化し、頻繁に出入りするからだ。これが、新時代の職場の特長だ。新人から再雇用者まで、正規雇用者、非正規雇用者、契約社員、パート・アルバイト、男性、女性、イクメン、産休、外国人。
メンバーが変わろうと職場の目標と業務は変わらない。マネジャーは、与えられたメンバーを活用して、目標達成を目指す。ならば、誰に、何をさせて目標を達成するのか、それがマネジャーの課題だ。
誰だろうと、業務遂行してくれれば、よいメンバーだ。また誰にでも、適切な業務を割り当てて成果を出させることがマネジャーの責任だ。
一方、メンバーは、正規でも非正規でも、短期でも長期でも、職場の方針と担当業務を理解し、職場のエチケットを守って成果を出すことが求められる。
業務を中心としたマネジメントが成果を上げる時代だ。
≪続く≫
調査報告会にて。
先日、調査活動を終えたので結果を報告した。3か月にわたり販売会社を調べた。
“マネジメント層は、日々何をしているのか?”
多くの販売会社の中で先行しており、実績のよい会社を調べた。その実態がわかれば、他の販売会社の事業推進に役立つだろう。これから調査結果を踏まえて、『マネジメント・マニュアル』を作成する。
本社としては、全国の販売会社で実績を上げてもらいたい。要は、ベンチマーキングだ。ヒアリングとアンケートでマネジメント層の業務実態を調べた。マネジメント層を調べることで組織運営もわかり、効率的な事業推進の方法もわかる。
実績を上げている会社は、「基本を、日々着実に実行している。」
伝統的なマネジメントの原理原則と変わったことをしているわけではない。マネジメントの実態は、基本の繰り返しであった。確かに、他業種や競争相手から見れば目新しいことがあるかも知れないが、それは表面的で短期的なことだ。「面白くない」かも知れないが、これが現実だ。
今回の調査分析には、「管理原則の父」と言われる、ジュール・アンリ・ファヨールの「管理の5機能」をモデルとしてを使った。「管理の5機能」とは、管理過程論の一つである。
経営管理者が、1)計画機能 2)組織化 3)指令機能 4)調整機能 5)統制機能を順次行い、目標達成を目指す。
具体的な内容は、日々どの会社でもやっていることだが、それでも業績に差が出る。組織運営は、違ったものになる。“それは、なぜか?”
そこに、マネジメントの本質がある。
「マイスター制度」の設計手順。
「マイスター制度」は、企業ごとに内容が違うので個別に設計する。人材育成の一端を担う「マイスター制度」は、人事戦略とリンクしているので、先行事例の模倣やツールの使い廻しはしない。
まず、制度設計のためのプロジェクト・チームを発足する。(以下、PJ。)PJメンバーは、人事部を中心にライン部門の責任者、若手社員、再雇用者から選び、5~6名で構成する。
1.PJ会議(Meeting)を開き、制度の目的、目標、対象者、内容、PJの推進計画を決める。
2.教育ニーズ、再雇用者のキャリア、指導内容等を調査(Research)し、制度設計の前提となる現状を調べる。
3.調査結果から、制度設計(System)を行う。
4.「マイスター制度の手引き」、「インストラクター・マニュアル」などの冊子(Tool)、「インストラクター登録カード」、「カテゴリー別講座一覧」などの管理資料(Tool)を作成する。
5.制度説明会を開き、再雇用者に調査結果、制度内容を説明する。(Meeting)
6.再雇用者の「マイスター登録」を行う。(PJは目的を終えて解散する。)
7.人事部が主管し、再雇用者の教育(Education)「インストラクター研修」を行い、再雇用者がインストラクション・スキルを習得する。
8.制度の運用管理を始める。
≪続く≫